公文教育研究会指導者用　くもん出版ストア

　小学6年生のマホは、読んだり書いたりすることが非常に困難な「ディスレクシア」という学習障害をかかえている。
　書かれた文字や行が重なって見え、単語をひとまとめにとらえるのが苦手なため、一字、一字ひろって読むしかできない。また、目の動きに問題があるので、言葉や行を飛ばしたり、また戻ってくりかえし読んだりする。転校した友だちの手紙すら読めないことに絶望していた夏……。

　ある日、お気に入りの博物館に出かけたマホは、丸天井の下、端正な顔立ちの少年、正樹と出会う。
　盛り上がる会話のなかで、ふと正樹の口から出た言葉「おまえ、もしかしたら……たとえば……作家かなんかになりたいとか？」に、マホの心はざわつく。
　作家……？　小説家……？　自分でも口にしたことのない言葉をさらりと口にする正樹。物語を書きたいのはほんとうだ。書きたい、書いてやりたい。でも、小説家になれない、本当の理由は言えやしない。自分の弱みをやすやすさらけだすわけにはいかないんだ。

　夢に悩み、あきらめ、それでも支え合って、前を向こうとする、マホと正樹。それぞれに苦しい時間を乗りこえたとき、丸天井の下、新しい時間が流れはじめる。